落葉樹がすっかり葉を落とし、植物たちは冬休みのようですが、冬ならではの楽しみは冬芽観察です。休眠状態で冬を過している植物たち、春に再び芽吹き、活動するために準備された冬芽の中には葉やつぼみが丁寧に折りたたまれて入っています。春、冬芽から葉や花が展開するさまは、まさに命が躍動する感があります。冬芽は厳しい冬を乗り切る命の玉手箱です。
①アオハダ(モチノキ科)青膚
冬芽は、短い円錐形、淡い褐色で無毛。正面から見える芽鱗は3~4枚。特徴は短枝に古い葉痕が連なり、よく発達するのが特徴です。
②アワブキ(アワブキ科)泡吹
冬芽は、裸芽で褐色の毛に覆われています。頂芽は手袋のような形で、4~6本の「指」で何かをつかもうとしているように見えます。また側芽が頂芽のすぐ下にありピンと立ったウサギの耳の様です。
③コブシ(モクレン科)辛夷
冬芽の花芽は大きく、温かそうな長軟毛に覆われています。芽鱗が見えにくく、毛は立っています。維管束痕は多数が一列に並びます。
④ハクウンボク(エゴノキ科)白雲木 別名オオバジシャ
冬芽は、長卵形で裸芽です。主芽の下に必ず予備芽を伴い、冬芽には柔らかい毛が密生します。葉痕はU字形~O字形で冬芽を取り囲みます。枝の表皮は縦に避け、短冊状に剥がれます。
⑤ホオノキ(モクレン科)朴の木 別名ホオガシワ
冬芽の頂芽は大型で日本の樹木の中で最大級です。芽鱗が寒さから守っています。
⑥トチノキ(トチノキ科)栃の木
冬芽の芽は大きく、銃弾のようで正面から見える芽鱗は7枚です。水あめ状の樹脂を分泌し、よく粘ります。これは虫を寄せ付けない為の知恵なのです。
【用語解説】
芽鱗(がりん):冬芽を保護するうろこ状のもの。葉身(葉の本体)、托葉、葉柄などが変化したものです。
維管束痕(いかんそくこん):葉痕の中に見える維管束(茎や葉柄で水分や養分の通路になっている管の集まり)の断面。
托葉(たくよう):展開前の葉を保護する、小さな葉のようなもの。
花芽(かが):展開した際に花又は花序になる冬芽です。
花序(かじょ):1本の軸に花が複数つく場合、全体の集まりを花序と呼びます。
葉痕(ようこん):葉が枯れ落ちた後
裸芽(らが):芽鱗を持たない冬芽。毛に覆われることが多い。
頂芽(ちょうが):枝の先端にあり、展開した後、枝または花を出す冬芽。